フクロウのクレイジーサイコセゲレイティッドウィットナス

イカれたサイコでサイコーなクリプトカレンシーWEBメディア

クレイジーでサイコなクリプトカレンシーWEBメディア「クレイジーサイコクリプト」

クレイジーサイコザハ 第1話

いつまでも恨めしげに鳴り続けるアラームを止め、私はようやくベッドから這い降りる。


ディスプレイに表示された現在時刻は午前十時。


「……またやっちゃったか」


まるで後悔しているかのように呟いてみた。まあ微塵も悪いとは思っていないのだが。だって、初めから目覚ましのアラームは十時にセットしていたのだから。こういうのは外向きの姿勢が大事なのだ。うん。


脳内で謎の言い訳を繰り広げた私は、放り投げたままのスマホを拾い上げる。げっ、着信14件。やれやれ。

 

のそのそと着替えを終え、しっかり朝食まで食べてから、ようやく私は家を出た。

 

外は快晴。穏やかな午前の太陽は、刺すような朝日よりもずっと目に優しかった。
なんだか良い感じじゃん。待ち受けているであろう上司からの説教は頭の外に放り出し、私はそこそこ上機嫌に駅へと向かった。

 

こうして私の、いつも通りの一日がまた始まった……はずだった。

この数時間後。いつも通りの日常なんてものは、危ういバランスの上に成り立った、鉄骨の上で目隠しをして片脚立ちをしているようなモノだってことを、私は嫌というほど思い知ることになるのだった。

 

~ここでOPが流れる~

 

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クレイジーサイコザハ 第1話「私とアイツとアラブ人」

 


「じゃお先です」

 

「お疲れ~」

 

かつての部署にいた定時退社するキラキラOLたちを恨めしげに見送り、私・盛土ザハ(もりど・ざは)はオフィスに残って作業を進めていた。

 

家を出た頃の上機嫌はすっかり鳴りを潜め、憂鬱な雨の日みたいな淀んだ空気が私に纏わりついていた。薄暗いオフィスで、PCのモニタが幽霊のような私の顔をぼうっと白く浮かび上がらせる。

 

つと、バッグの中のスマホが低い音をたてて震えた。通知を見れば、TwitterのDMだった。


 
「أنا أمير العرب. زها، يرجى الإجابة قريبا. هذا العالم يتجه نحو النهاية. أحتاج قوتك.」

 

 

「読めねえっつーの……」

小さく呟き、ディスプレイの電源を切る。

 

少し前から、アラビア語で書かれた謎のDMが届くようになった。

気味が悪いのだが、いちいちブロックするのも面倒で放置していた。ヘンに刺激してエスカレートされても嫌だし。

 
受付嬢として配置されていた私だが、突然の通達により技術系の部署へと異動となった。所謂バックエンドエンジニアだ。

 

元々情報系の学部を卒業したから知識はあったが、そこまで人手が足りないのだろうか。何かやらかしたか? と自問自答したが、思い当たるフシが多すぎて考えるのをやめた。


そうだ、あれはどうなったかな。

ふと思い出した私は再度スマホを手に取った。ブラウザで開いたのは仮想通貨の取引所。


一ヶ月ほど前、私がまだ受付嬢をしていた頃の話だ。仲の良い同僚五人でランチを食べていたとき、ビットコインの話題となった。

私を含め、その存在はみんな知っていた。IT系の企業ということもあってか、みんなリテラシーはそれなりに高かった。

「でも今からじゃもう遅いかな」

「私、一千万円まで上がるって記事前に見たよ」

「色々種類があるんだよね」

「億万長者になったらどうしよ」

他愛も無い雑談のはずだったが、妙な盛り上がりを見せた私たちは、そのままノリで取引所に登録までした。そして、数万円分だけ仮想通貨を買ってからすっかり忘れていたのだった。

 

取引所へログインし、自分の資産額を表示させたところでスクロールする手が止まった。

 

「え、なにこれ。なにこれ!」

 

思わず声が出た。


なんか名前が可愛いから、という適当な理由で買ったリップルという仮想通貨が、十倍以上に高騰していたのだ。

 

マジか。すげーな仮想通貨。

これ、ほんとに億万長者になっちゃうんじゃない? と一人ニヤけていたら、スマホが震えた。

 

「أنا أمير العرب. زها، يرجى الإجابة قريبا. هذا العالم يتجه نحو النهاية. أحتاج قوتك.」

 

「またかよ……」

喜びに水を差されたような気分になり、思わず小さく舌打ちする。
同時にふつふつと怒りが湧き上がってきた。

 

オーケーわかった、そっちがその気なら、そっちのリングでボロクソにしてやる。

翻訳サイトを使って考え得る限りの罵倒をしてやるんだ。

どうせ何かの勧誘か、無差別に送られた営業のDMだろう。日本のアカウントでもよくあるよね。フォローした瞬間しょうもない自動返信DMが飛んでくる奴がさ。

 

今までは面倒でやらなかったが、今宵のザハは血に飢えておる。

ひとまず内容を見た上で返信を考えようと、私はアラビア語を翻訳サイトにコピペした。

 

「……は?」

 

翻訳された内容を見て、私は目を疑った。

 


「私はアラブの王子です。 ザハ、すぐにお答えください。この世界は終わりに向かっています。私はあなたの力が必要です。」

 


……なんだこれ。

背筋に冷たいものが流れた。

 

何かの間違いかと、他の翻訳サイトも試してみた。

日本語への翻訳の精度の問題かと、アラビア語から英語への翻訳も試した。

しかし、出てくる結果はいずれも同様のものだった。

 

私はインターネットで実名を出すのに抵抗感を覚える種類の人間だった。ツイッターでもやはり、ハンドルネームを使っていた。

アカウント名は「リップルちゃん」。

以前リップルを買った時に作って以来、ほとんど呟かずに閲覧用に用いていた。

同僚にも、社外の友人にも、まだ誰にも教えていないはずだ。

どうしてこいつは私の本名を……?

 
「私はアラブの王子です。 ザハ、すぐにお答えください。この世界は終わりに向かっています。私はあなたの力が必要です。」


世界は終わりに向かっています? なんだよそれ。
どんな世界でもゆっくり死ぬんだから当たり前だろうが。

だいたい私の力が必要ってなんだ。私は勇者の血統だったのか? 馬鹿馬鹿しい。


質の悪い悪戯と笑い捨てることもできた。

ランチの時か何かに、スマホの画面を見られたのかもしれない。

もしかしたら、酔った拍子に自分でぽろっと漏らしてしまっていたのかもしれない。


うん、考えられるまともな可能性はいくつもある。

そう自分に言い聞かせた私だが、しかし、妙な胸騒ぎを止めることはできなかった。


(続く)

 

~ED が流れる~

 

『次回予告』

アラブの王子を名乗る人物から謎のDM(ダイレクト・メール)を受け取った普通のOL、盛土ザハ。

 

そこには知られているはずのない本名と、「あなたの力が必要です」という言葉。

 

果たしてDMの送り主の正体は!?

ザハの力が必要ってどういうことなの!?

ザハはリップルで億万長者になれるの!?


そして、そんなザハの背後で暗躍する「謎の組織」が登場……!?!?

 

次回、クレイジーサイコザハ 第2話「お前……消えるのか?」

 

絶対見てくれよな!